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泌尿器科でのロボット(ダビンチ)支援手術について

泌尿器科領域でのがん治療

泌尿器科領域での癌治療において手術は大きな柱の一つであります。手術は癌に侵された部位を取り除くことで根治をさせることと病理検査によって診断を確定させ、術後の経過観察、補助療法の適応に活用されます。

手術療法とは皮膚の切開、術野の展開、対象臓器への到達、目標とする操作(全摘除、部分切除、形成など)、閉創のプロセスで成り立っています。従来から行われていた開腹手術はこれらを段階的に実施していました。21世紀になると腹腔鏡手術が主流となり、小さな創部から腹腔あるいは後腹膜腔へ二酸化炭素を注入し一気に展開から到達までの操作が可能となりました。さらに気腹圧による出血の低減、近接・拡大視野による精緻な操作、正確な解剖の理解・把握により大幅な低侵襲を実現しました。医療機関にとっても早期離床、入院期間の短縮により効率的な運営が可能となっています。内視鏡画面を出力することで、術者・助手のみならず、麻酔科医、看護師、研修医、学生などのすべての参加スタッフが術野を共有しています。これらは教育的には極めて有用であり、他施設との比較により術式の標準化にも寄与しています。特定の医師にしかできない、いわゆるGod Handが不要となり比較的若いうちから手術を実施できるようになりました。手術の内容はデータとして保存されており、医療安全の側面からも有用であるといえます。一方で体腔内での運針や結紮は難易度が高く、改めてトレーニングが必要であり、これらを補うために新しい技術体系の構築が必要でした。

泌尿器科でのロボット(ダビンチ)支援手術

腹腔鏡手術から10年を経て、ロボット手術が先進医療施設や大学病院で積極的に導入されるようになりました。

ロボット手術は正式にはロボット支援腹腔鏡手術のことであり腹腔鏡手術の進化版ととらえることができます。2018年4月、泌尿器科領域では前立腺癌(全摘除術)、腎細胞癌(部分切除術)、膀胱癌(全摘除術)が適応となっており、他の領域では直腸癌、胃癌、食道癌、肺癌、縦隔腫瘍、子宮体癌などを対象に14術式が適応となっています。さらに2020年には良性疾患である仙骨腟固定術(骨盤臓器脱)、腎盂形成術(腎盂尿管移行部狭窄症)も実施可能となっています。開腹手術から腹腔鏡手術まで数十年以上の月日を要しましたが、腹腔鏡からロボット手術までは実に10年で移行しています。

医療技術は加速度的に進歩しており、その速さに驚きを隠せません。二次元モニタが三次元視野に進化し、カメラを通して見られる映像がより精緻、より実際的です。操作を行う鉗子の自由度が高くなることにより腹腔鏡手術では難易度の高かった切離・縫合・結紮操作が自在にできるようになりました。操作に手ぶれがなく、クラッチ操作でギア比を変更することによりダイナミックな操作と緻密な操作が自在となり更なる手術時間の短縮に繋がっています。経験の少ない医師においても、安全に手術の実施ができるようになり、医学生・研修医の病院選択の要素にもなっています。患者さんからもロボット未導入であると、遅れている病院との評価となり選ばれる施設にはなり得ません。今回の導入により院内のスタッフはもとより、患者さん、学生さんからも支援されるきっかけになったと考えています。メリットの大きさが強調されますが、ロボットシステムの購入には高額の費用がかかります。また、操作を行うのは人間ですし、助手の先生、麻酔科医、看護師・臨床工学技士、事務職員等すべての院内スタッフが関わっています。皆さんのお力添えがなくして発展はありません。ロボットの時代になっても、人間を救うのは人間だ、これは変わらないようです。

前立腺癌、腎細胞癌につきましては、別途資料をご用意しておりますので、ご一読下さい。

また、患者さんのプライバシーに配慮した手術動画も用意しています。ご希望の患者さんには個別に視聴していただく準備を行っています。