肝疾患領域ではB型肝炎に対する抗ウイルス治療(エンテカビル、テノホビルなど)やC型肝炎に対する内服治療(DAAs;Direct acting antivirals)によりウイルスの除去、肝炎の進展予防を行っています。C型肝炎のDAAs治療は次々と登場し急速に進歩していますが、当科でも積極的に導入しており県下有数の症例数となっています。ウイルスの遺伝子型、変異の種類、過去の治療歴、他の疾患の合併やそれに対する治療薬の内服などによって、治療法が異なりますので、ひとりひとりの患者さんに適切な治療を受けていただくようにしています。
肝癌症例に対してはラジオ波焼灼術(RFA)やマイクロウェーブ焼灼術などの局所療法を中心とした治療を行っています。また2020年9月から使用可能となった免疫チェックポイント阻害薬、複数の分子標的治療薬などの化学療法も積極的に導入して、肝癌に対する更なる治療成績の向上を目指しています。安全面にも十分配慮し、合併症の頻度は低いレベルを保っております。また、外科・放射線科とのカンファレンスを週1回行い、適切に治療方針を決定しています。
ウイルス性肝炎や脂肪肝炎の病状が進行すると、脂肪の沈着などに伴い、自覚症状なく徐々に肝臓が硬く肝機能が低下した肝硬変になり、肝癌が発生する場合があります。従来肝臓の病状の評価は、肝臓に針をさして組織を採取する肝生検という方法で行われてきました。当院では2016年度から、体を傷つけずに肝臓の硬さや脂肪量を測定できる『フィブロスキャン』を導入しました。この機械を用いて肝臓の硬さや脂肪の程度をみることで、肝臓の病気の進行度がわかります。『フィブロスキャン』は外来にて5分程度で検査が可能であり、従来肝生検ができなかった患者さんでも安全に行うことができます。
食道静脈瘤に対する治療は内視鏡的硬化療法(EIS)や内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)を症例に応じて選択し施行しています。また、孤立性胃静脈瘤を含む異所性静脈瘤の治療も内視鏡治療やB-RTO(バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術 )で治療を行っています。それらの治療で緊急止血や予防、待機例での治療が可能となっており、現在は苦痛を伴うS-B tubeを使用する症例はほとんどありません。
胆膵疾患に対しては、CT、MRIに加えて超音波内視鏡検査(EUS)を積極的に行い、膵腫瘍や慢性膵炎、胆道系腫瘍の早期発見や診断に効果をあげています。また内視鏡的逆行性膵胆管造影検査(ERCP)による診断(腔内超音波、膵管ブラッシング、膵液採取、胆管生検など)、治療(乳頭切開術、結石破砕術、胆管及び膵管内ドレナージ、胆管鏡など)を行っています。さらに超音波内視鏡を用いた穿刺吸引細胞診や膵のう胞ドレナージ術、胆管ドレナージ術を積極的に行っており、特に超音波内視鏡下胆管ドレナージ(EUS-BD)は、従来のERCPでは内瘻化不可能であった症例に対しても対応可能となっています。また内視鏡治療が困難な症例では、経皮的治療(胆管ドレナージ術、胆嚢穿刺吸引術、胆嚢ドレナージ術、胆管ステント、胆管鏡など)を行っています。巨大な総胆管結石に対しても、胆管鏡を用いた砕石術等を併用し出来得る限り内科的に治療を行っています。ESWLは膵石にも有効な治療ですが施行可能施設が少ないため当院に症例が集まっています。最近では、抗血小板薬などの内服により経皮処置のリスクが高い急性胆嚢炎症例や寝たきりの高齢者など、手術困難な胆嚢炎症例の治療として経乳頭的胆嚢ドレナージ術も行っておりますが当科では専用チューブを開発して治療に役立てています。腫瘍疾患に関しては外科と綿密に連携をとりながら手術を含めた適切な治療を提供しています。手術不能例に対しても化学療法のチームと協力して患者さんの全身状態や病態に合わせた治療法を提供しています。
2022年 | 2022年 | 2021年 | 2020年 | 2019年 | 2018年 | 2017年 | 2016年 | |
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EUS(生検などを含む) | 431 | 369 | 317 | 351 | 383 | 225 | 196 | 192 |
EIS,EVL | 49 | 64 | 50 | 64 | 59 | 43 | 48 | 53 |
ERCP | 421 | 503 | 553 | 424 | 442 | 431 | 283 | 344 |
また、当センターでは積極的にクリニカルパスを導入することで診療レベルの均質化や入院期間の短縮にも努めています。