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血液内科

Department of Hematology

内科系全般から血液、糖尿病・内分泌、血管疾患まで、幅広く対応しています。

松山赤十字病院 血液内科

主な疾患・治療法

血液

白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などの腫瘍性疾患を中心に、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血や免疫性血小板減少症など全ての血液疾患に対して幅広く治療を行っています。特に造血幹細胞移植による難治性血液疾患の治療に注力し、2002年6月に日本さい帯血バンクネットワークの移植医療機関に認定され、2003年7月には骨髄移植推進財団非血縁者間骨髄移植・採取認定施設となりました。腫瘍性疾患に対しては、抗がん剤を中心とした標準的な化学療法に加えて、多種多様な分子標的治療薬、抗体薬、細胞治療などの新規治療を積極的に導入し、造血幹細胞移植も含めた治療の標準化・最適化を行っています。また、血液センターと連携し、輸血の適正化を推進するとともに、将来の献血者確保のための啓発活動も行っています。

1. 同種造血幹細胞移植(Allogeneic Stem Cell Transplantation)

標準的な化学療法では治癒困難な白血病やリンパ腫などの悪性疾患、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血などの骨髄不全症に対する最も強力な治療です。放射線や大量化学療法を用いた前処置後に、ドナーさんの骨髄液、末梢血幹細胞、臍帯血のいずれかを輸注し、ドナーさんの細胞による免疫応答および造血を利用して、難治性疾患の治療を行うものです。当院では2020年には年間16例の同種移植を施行しています。2021年には新病院となり、新たに細胞治療室が開設され、14床のクラス100水準のクリーン・ルームで移植医療を行えるようになりました。血縁ドナー、非血縁ドナーのいずれも、骨髄採取は骨髄バンクの骨髄採取ガイドラインを遵守し、手術室で行います。また末梢血幹細胞採取は日本造血・免疫細胞療法学会の「同種末梢血幹細胞移植のための健常人ドナーからの末梢血幹細胞動員・採取に関するガイドライン」に則り、スペクトラ オプティア(遠心型血液成分分離装置)を用いて、細胞治療室で行います。

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2. 自家末梢血幹細胞移植(Autologous Stem Cell Transplantation)

多発性骨髄腫、化学療法感受性のある再発悪性リンパ腫、全身性アミロイドーシスなどに対して標準治療としての意義が確立しており、より深い寛解を得るために行う寛解後療法です。あらかじめ化学療法やG-CSF製剤などを用いて、自分の末梢血幹細胞採取を行い、凍結保存します。その後、超大量化学療法を行い、凍結保存した自己の末梢血幹細胞を輸注することで、早期の造血回復を促します。多発性骨髄腫においては、全身状態や合併症が問題なければ、70歳代でも施行可能です。幹細胞採取、保存は全て専門医が行っており、多くの場合、1-2回の採取で十分な幹細胞の採取が可能です。

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3. 白血病(Leukemia)

急性骨髄性白血病に関しては、国内外のガイドラインに沿った標準治療を行い、移植適応がある場合は積極的に同種移植を行っています。急性リンパ性白血病に関してはFBMTG(福岡骨髄移植グループ)の臨床試験(FBMTG ALL2023 protocol)に参加して、微小残存病変(MRD)を確認しながら標準的な多剤併用化学療法を行い、ハイリスク症例に対してはチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)併用化学療法や、同種移植を行います。移植適応のない高齢者に対しても、標準治療に準じた治療を中心に、可能な限り寛解を目指しつつ、分子標的治療薬や抗体薬も用いながら、全身状態に応じた治療を行っています。慢性骨髄性白血病に対しては、5種類のTKIを適切に使い分けて治療を行います。

4. 悪性リンパ腫(Malignant Lymphoma)

低悪性度B細胞性リンパ腫に対しては、抗CD20抗体(リツキシマブ, ガザイバ)と抗がん剤、放射線の組み合わせで治療を行います。中高悪性度リンパ腫に対しては、B細胞性リンパ腫の標準治療であるR-CHOP療法や、DA-R-EPOCH療法に代表される多剤併用化学療法を、組織型に応じて行っています。高齢者ではR-TCOP療法を中心とした強度を調整したレジメンを年齢、全身状態に応じて行います。また、ハイリスク症例や再発難治性リンパ腫に対しては、移植適応があれば積極的に自家末梢血幹細胞移植や同種移植を行います。CAR-T細胞療法(キムリア)が適応となる患者さんに関しては、他県の施行可能な医療機関と連携して必要に応じて紹介させて頂いております。また、新しい標準治療となり得る新規薬剤や新規抗体薬の臨床治験への組み入れを積極的に行っています。

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5. 多発性骨髄腫(Multiple Myeloma)

かつては抗がん剤、ステロイド薬しか治療選択肢がなく、平均余命3年とも言われた難治性疾患ですが、2006年のベルケイドを皮切りに、この15年で数多くの分子標的治療薬、抗体薬が登場し、めざましい治療の進歩が得られています。依然根治は難しいものの、3種類から4種類の新規薬剤、抗がん剤、ステロイド薬の組み合わせを用いて、十分な寛解導入療法を行い、維持療法で深い寛解を維持することで、平均余命は6年を超え、10年以上治療継続可能な方も増えてきています。国内外のガイドラインに準じた寛解導入療法から、移植適応がある場合は積極的に自家末梢血幹細胞移植を行い、地固め強化療法、維持療法を組み込んだ治療を一連として行います。移植非適応の高齢者に対しても、全身状態を維持しながらできるだけ深い寛解を得ることを目標に、当院も治験に参加したALCYONE試験(Phase 3)で示されたダラザレックス+VMP療法など、ガイドラインで推奨される治療を積極的に行っています。また「日本骨髄腫患者の会」という非常にしっかりとした患者さんの組織がありますので、分かりやすい最新の情報が必要な場合や、病院で相談しにくい場合は、是非ご活用ください。

6. 治験(臨床試験)

血液疾患は依然治療成績が十分ではない難治性疾患が多いため、当科は国内外の新薬開発にも積極的に参加しています。全登録患者数の1割以上を担当し、既に市販され、数多くの患者さんの命を救っている薬もあります。治験、臨床試験というと実験的治療と勘違いされがちですが、現在は医薬品臨床試験実施基準(GCP)に基づき、患者さんの安全確保と人権保護に細心の注意が払われた上で、行われています。治験参加が患者さんに有益であると主治医が判断した場合に、参加について提案させて頂きますので、主治医および治験コーディネーターより十分な説明を受け、その意義をご理解頂ければご参加ください。

7.その他

血友病に代表される先天性あるいは後天性の凝固異常症、また種々の免疫不全症に対しても幅広く対応しています。

現在当科で行っている多施設共同研究として以下のものがあります。血液疾患の治療は日進月歩であり、いずれも最も有効であると考えられる治療を遅滞なく患者さんに提供するための臨床研究です。院内の倫理委員会の承認を受け、治験と同様に患者さんの安全確保と人権保護に、細心の注意を払い実施しています。詳細は以下の臨床研究に関するお知らせをご参照ください。また、セカンドオピニオンに関しても受け付けておりますので、以下のリンクより詳細をご確認ください。