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産婦人科

Department of Obstetrics & Gynecology

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卵巣腫瘍について

このページの内容

卵巣腫瘍とは?

卵巣は子宮の左右に位置する臓器で通常、閉経前では親指頭大、閉経後は萎縮して小指頭大となります。この卵巣に発生した腫瘍は卵巣腫瘍です。卵巣腫瘍には様々な種類(組織型)があり、その発生組織により上皮性、性索間質性、胚細胞腫瘍に大別され、それぞれに良性腫瘍、境界悪性腫瘍、悪性腫瘍(卵巣癌)があります。

どんな症状がありますか?

卵巣腫瘍が小さいうちはほとんどど無症状で経過します。骨盤内で大きくなると下腹部腫瘤感、腹部膨満感(お腹が張る)、下腹部痛、圧迫症状(膀胱圧迫であれば頻尿、逆に無尿、直腸圧迫であれば便秘、骨盤神経圧迫であれば腰痛、下腹部痛)、月経異常、不正出血、腹水、胸水などの症状があります。時々急性腹症(急に下腹部痛があること)を生じる場合があり、この場合は茎捻転(腫大した卵巣が骨盤内で捻れて痛みを生じること)であったり、腫瘍が破れる(破裂する)ことがあり、突然の下腹部痛を感じたらかかりつけ婦人医を受診してください。

診断方法は?

まずは内診および超音波診断により、卵巣腫大の有無を確認し、超音波画像のパターンによりある程度、良性、悪性の可能性を診断します。超音波所見上、腫瘍が嚢胞状の場合の多くは(80%程度)は良性腫瘍ですが、充実性部分と嚢胞性部分の混在している場合や充実性部分で占められている場合は境界悪性腫瘍や悪性腫瘍(卵巣癌)を疑います。さらに造影MRI検査や腫瘍マーカー検査、場合によっては造影CT、消化管精査(胃カメラ、大腸造影、大腸カメラなど)を追加します。担当医はこれらの所見を総合的に判断して、良性、悪性のどちらの可能性が高いかを判断しますが、最終的な診断は手術により摘出した腫瘍の組織診断で確定されます。

どのような治療をしますか?

治療は手術療法が原則です。術前の総合的評価により良性腫瘍と判断されれば、腫瘍部分だけを摘出し卵巣を温存する術式が可能ですが、年齢、出産の有無、術後の妊娠希望の有無などを考慮して卵巣温存あるいは卵巣摘出するかを決定しますので、担当医とよくご相談ください。良性腫瘍であると判断されればより負担の少ない(低侵襲である)腹腔鏡手術を選択できます。境界悪性腫瘍の場合は開腹して(お腹を開けて)子宮、両側の卵巣卵管、大網(胃と大腸の間の脂肪の膜)を切除することが基本です。悪性卵巣腫瘍(卵巣がん)の場合は、さらに加えて骨盤リンパ節やその上位の傍大動脈リンパ節を切除したり、腫瘍の広がりによっては腸管や腹膜の合併切除が必要な場合があります。ただし、以後の妊娠出産を希望される場合は、境界悪性腫瘍や悪性腫瘍であっても、その種類(組織型)や拡がり(進行期)により、正常側の卵巣、子宮を温存することが可能な場合があります。この点も担当医とよくご相談ください。

卵巣悪性腫瘍(卵巣がん)の術後治療は?

卵巣悪性腫瘍はその種類(組織型)と拡がり(進行期)により、術後の抗がん剤(がん化学療法)の必要性や使用する抗がん剤の種類が決定されます。上皮性卵巣がんの場合術後投与する抗がん剤の種類はタキサン製剤(パクリタキセルなど)とプラチナ製剤(カルボプラチンなど)を用いることが一般的で進行期や組織型により3〜4週間間隔で3〜6コースの治療を行います。最近はベバシズマブ、オラパリブといった新しい種類の薬剤(分子標的治療薬)が保険適応となり、これまでの抗がん剤治療と組み合わせて投与するようになりました。これらの治療により卵巣悪性腫瘍の予後(生存率)の向上が期待されます。卵巣悪性腫瘍の予後は以前に比較して飛躍的に改善されつつありますが、卵巣がんは以前より静かなる殺し屋”silent killer”と言われる通り、診断が遅れる場合もありますので、何か気になることがあればかかりつけの産婦人科の先生を受診して紹介していただいてください。