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産婦人科

Department of Obstetrics & Gynecology

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妊娠高血圧症候群

このページの内容

妊娠高血圧症候群とは?

文字通り妊娠時に高血圧を発症することです。妊娠前より、あるいは妊娠20週までに高血圧を認める場合は高血圧合併妊娠と言います。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と呼びます。収縮期血圧が140mmHg以上(重症では160mmHg以上)、あるいは拡張期圧が90mmHg以上(重症では110mmHg以上)になった場合、高血圧が発症したと言います。尿中に1日0.3g以上の蛋白が出る場合(重症は2g以上)に蛋白尿を認めると言います。

この妊娠高血圧症候群は妊婦さんの5%程度に発症します。特に早発型(34周未満)での発症は重症化します。重症化すると子癇(高血圧、蛋白尿の重症化に全身の痙攣発作と意識消失)、脳出血、HEELP症候群(肝腎機能障害、溶血、血小板減少)、胎児発育不全、常位胎盤早期剥離(分娩前に胎盤が剥がれて赤ちゃんと母体の状態が悪くなること)、胎児機能不全(赤ちゃんの状態が悪くなること)、胎児死亡など、妊娠高血圧の重症化はお母さん、赤ちゃんにとって大変危険な状態となります。

どのような人がなりやすいのか?

もともと糖尿病、高血圧、腎臓病をお持ちの方、肥満、高齢妊娠、家族歴で高血圧がある、双胎(双子)、初産婦、以前の妊娠高血圧症候群であった方、このような妊婦さんはリスクが上がりますので注意しましょう。

治療方法は?

治療は安静と入院が中心でけいれんの防止や高血圧の重症化の防止のため薬物を使用することもありますが、根本的な治療はありません。お母さんの状態と赤ちゃんの状態を慎重に判断し、妊娠を終わらせること(妊娠帰結)が必要になります。どの時期が良いかの判断が悩ましい場合が多く、妊娠34週以降に重症化すれば妊娠帰結を検討します。妊娠34週未満であれば赤ちゃんの未熟性を考慮し新生児科の先生との十分な検討の上、帰結時期を判断します。通常、分娩後お母さんの症状は急速によくなりますが、重症化していた場合は高血圧、蛋白尿、その他の症状が持続することがありますので、十分に経過観察する必要があります。お産後も気をつけましょう!

妊娠高血圧症候群になった方は将来の心血管系の病気(例えば、高血圧、虚血性心疾患、脳卒中、静脈血栓症)になるリスクが高まります。報告では高血圧は3.7倍、虚血性心疾患は2.2倍、脳卒中は1.8倍、静脈血栓症は1.2倍となります。また高血圧の妊婦さんから生まれたお子さんも高血圧、肥満のリスクが高まるとの報告もあります。最近の報告では妊娠高血圧症候群の既往のある女性は分娩後2年以内に28.4%の方が高血圧との診断を受けます。さらに産後6ヶ月で発症する方が最も高いとされています。そのためのお産の後もかかりつけの内科の先生や産婦人科の先生でしっかり高血圧を中心とした健診を受けることを強くお勧めします。