胎盤が正常より低い位置(腟に近い側)に付着し、子宮の出口(内子宮口)の一部あるいは全部を覆っている状態を前置胎盤と言います。全分娩のおよそ1%弱を占めています。通常の経腟分娩では赤ちゃん→胎盤の順で出てきますが、前置胎盤では子宮口を胎盤が塞いでいる状態のため、赤ちゃんは出てくることができませんし、胎盤から大出血を起こしてしまいます。したがって前置胎盤の場合は100%が帝王切開分娩となります。低置胎盤の場合は経腟分娩が可能な場合もありますので主治医にご相談ください。
妊婦健診時の超音波検査で発見される場合がほとんどで、それまで多くの場合は無症状です。ただ、全く痛みがなく急に少量の出血する場合(警告出血)がある場合があります。警告出血は少量の出血が数回というパターンからいきなり大出血というパターンまで様々です。腹痛がなくても出血があれば産婦人科に連絡をしてください。
前置胎盤では妊娠28週以降に性器出血(警告出血)の頻度が徐々に増加してきます。「予期しない自宅での大量出血」となることが一番危険ですので、そのようなことにならないように妊娠31週までに前置胎盤か否かの診断をつけます。32週までに高次施設に紹介受診をしてください。妊娠中に出血した場合はその時点で入院していただき、お腹が張らないように子宮収縮抑制剤を投与して適切な帝王切開の時期を検討します。また33~34週頃から自分の血液をストックする(自己血貯血)こともあります。万全な準備をして帝王切開に備えます。
妊娠37週末(患者さんと病院の状況に応じては38週)までに予定帝王切開となります。あまり早いと赤ちゃんが未熟だったり、あまり予定日に近くなると陣痛がきて大出血となることがあるためです。しかしながら、予定帝王切開より前に出血が生じた場合は止むを得ず、緊急帝王切開となる場合もあります。その場合は赤ちゃんは新生児集中治療室(NICU)への入院治療が必要となる場合があります。また前置胎盤の帝王切開でどうしても出血が止まらなくなりお母さんの命に危険が及ぶと判断された場合には、お母さんの命を守るために子宮を摘出する場合もあります。前置胎盤と診断された場合は担当医とよく相談して、妊娠中の管理方法、帝王切開の時期を相談してください。