中耳疾患は成人の慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎、および乳幼児小児の急性中耳炎、滲出性中耳炎を中心に診療を行っています。慢性中耳炎、特に真珠腫性中耳炎の治療は手術が原則で、積極的に手術を行っています。小児の中耳炎の多くはかかりつけ医と連携して対応し、当科では重症例の入院治療や鼓膜チューブ留置等の手術を主に行っています。
突発性難聴は一般に治癒するケースが3割程度で、難聴が残る症例も少なくありません。入院安静とステロイド剤を中心とした薬物治療を基本に治療を行っています。
めまいについては、聴力・平衡機能検査、画像診断などを行い原因の究明につとめています。治療では、良性発作性頭位めまいに対しては浮遊耳石置換法を、メニエール病に対しては保存的治療を原則に対応しています。 顔面神経麻痺は種々の原因で起こりますが、最も頻度が高いのはベル麻痺です。本疾患では、安静とステロイド、抗ウイルス剤を中心とした薬物療法を行っています。発症早期に治療を開始すれば、高度麻痺でも良好な回復を示す症例が多く、早期診断早期治療が重要です。また予後不良例が多いハント症候群でも同様の治療で良好な結果を得ています。
慢性副鼻腔炎は内服薬を中心とした保存治療で改善する場合もありますが、特にアレルギー性鼻炎や気管支喘息に合併する難治な副鼻腔炎では保存治療では治らない場合が少なくありません。そのような例に対しては内視鏡下鼻内副鼻腔手術(ESS)を行い、良好な結果を得ています。ESSは従来の副鼻腔根本手術に比較し侵襲が小さく、頬部のしびれ感、術後性頬部嚢胞などが非常に少ないことが利点です。最近はナビゲーションシステムを導入し、さらに安全、確実な手術になるよう努めています。内視鏡を用いた鼻内手術は眼窩吹き抜け骨折、鼻副鼻腔腫瘍などにも応用しています。
薬物治療では効果が不十分な高度のアレルギー性鼻炎に対しては、下鼻甲介手術や後鼻神経切断術を行い症状の改善を図っています。
扁桃周囲膿瘍や急性喉頭蓋炎は緊急入院治療の対象となる疾患で、主に抗生剤等の薬物治療を行いますが、重症例では緊急手術を要します。
慢性扁桃炎や扁桃肥大、アデノイド増殖症は手術目的に紹介される最も頻度の高い咽頭疾患です。アデノイド切除術では内視鏡の導入で安全確実な手術に努めています。
声帯ポリープや喉頭腫瘍、咽頭腫瘍は内視鏡による観察や生検により的確な診断を心がけています。治療は手術になることが多く、声帯疾患は従来からの喉頭微細手術、それ以外の腫瘍性疾患については経口的咽喉頚腫瘍切除術を導入し、低侵襲手術を目指しています。
閉塞性睡眠時呼吸障害(いびきを含む)では、内視鏡検査、終夜睡眠ポリグラフィー、画像診断等で治療法を決定しています。幼少児ではアデノイド切除や口蓋扁桃摘出など手術が主体ですが、成人ではCPAP(経鼻的持続陽圧呼吸)を主に用い、状況により鼻腔形態改善手術を行っています。
唾液腺腫瘍や甲状腺腫瘍、頸部嚢胞性疾患の治療は原則として手術となることが多いです。とくに甲状腺腫瘍は女性に多く、手術創がなるべく目立たなくなるようこころがけています。耳下腺腫瘍は良性であっても再発しやすいものが多く、手術にあたっては顔面神経の保存とともに再発を起こさないようつとめています。
口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、副鼻腔癌、唾石腺癌、甲状腺癌等が診療対象になります。頭頸部悪性腫瘍の治療にあたっては、根治性を確保しながら整容上の問題や摂食、嚥下、発声、構音などの機能障害をいかに最小限にするかが重要です。このために放射線治療科の協力のもと放射線治療、化学療法などを活用し、手術に当っては歯科口腔外科、形成外科、外科など関連他科の協力を得ながら所期の目標を達成するようつとめています。近年は咽喉頭の原発巣切除に対して経口的咽喉頚腫瘍切除術を導入し、低侵襲手術を目指しています。