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皮膚科

Department of Dermatology

頭から足の先まで、皮膚科は広い診療範囲をカバーし、湿疹、炎症、熱傷、潰瘍、腫瘍など多彩な疾患に対応しています。

主な疾患・治療法について

このページの内容

診療情報

皮膚は、体の表面をすべておおっている大きな器官です。
皮膚科の診療範囲も頭から足の先まで広い範囲をカバーしています。髪の病気、爪の病気、くちびる、口の中、陰部なども見える部分は、すべて診療します。平成22年4月から常勤医3名となり、より専門的な皮膚科診療を提供できる体制が整いました。時間外救急、全身管理が必要な重症皮膚疾患患者さんも積極的に受け入れていきたいと考えています。

診療内容

アトピー性皮膚炎をはじめとする湿疹・皮膚炎群、皮膚の血管炎、熱傷、皮膚潰瘍、中毒疹・薬疹、自己免疫性水疱症、膿疱症、膠原病、乾癬、色素異常症、皮膚腫瘍(良性・悪性)、細菌・ウイルス・真菌性皮膚疾患、円形脱毛症、その他全般的に皮膚疾患の治療に対応しています。ただし、再建や植皮術を必要とする皮膚腫瘍切除術は形成外科に依頼しています。美容皮膚科は行っておりませんのでご了承ください。

「皮膚がん」に関するQ&A

基底細胞がんは、正確な年間発生数は不明ですが、日本人に最も多い皮膚がんです。通常のがん年齢よりも高齢者に多い傾向(60歳代が全体の26%、70歳以上が全体の45%:国立がんセンター集計)があります。初期症状として最も多いのは「ほくろ」と勘違いされる小さな黒いオデキです。大きくなると中心部は崩れ、周辺部は堤防状に盛り上ります。多くは上下のマブタ・鼻・上口唇のまわりなど顔面の中心付近に好発します。基底細胞がんは皮膚がんのなかでは性格がおとなしく、増殖のスピードが遅く、転移することもほとんどありません。手術で確実に切除すれば完治することが多いです。

先ほど述べた基底細胞がん以外にも皮膚がんには多種ありますが、ここでは比較的頻度の高い、有棘細胞がん、悪性黒色腫をとり上げます。有棘細胞がんは、表皮の有棘細胞から生じたがんです。高齢者に多く、性別ではやや男性に多く、最近では平均寿命を乗り越えた方々の発症が増加しています。通常は皮膚の盛り上がりで中央が赤身の肉のように見え、表面はジクジクして出血しやすく、進行すると腫瘍の形はカリフラワー様になります。ただし中には、潰瘍病変として発生する場合もあり注意が必要です。悪性黒色腫は、メラニンをつくり出す皮膚細胞(メラニン細胞)から発生するがんです。発生頻度には人種差があり、日本人は人口10万あたり1~2人とされます。多くは黒色調を呈する色素斑として認識されます。左右非対称の不規則な形状、色調も濃淡不整が見られ、境界も不均一です。日本人では足底に発生することが多いです。皮膚がんの中では最も悪性度が高く、早期からリンパ節、内臓への転移が起こり治療が難しくなることが多いです。

密接な関連があります。紫外線により誘発される皮膚がんには有棘細胞がん、基底細胞がん、悪性黒色腫、日光角化症があります。紫外線は皮膚の細胞のDNAにダメージを与え、その中からがんのもとになる細胞が出現すると考えられています。また、紫外線は皮膚の免疫機能を低下させ、がん細胞を排除する腫瘍免疫機構が働きにくくなり、がんが進行しやすい状態になります。疫学的にも日差しの強い南国に住む人、漁業など屋外での仕事に従事していた人では皮膚がんの発生率が高くなることがわかっています。

皮膚がんは様々な臨床症状を呈しますが、以下のような症状があったら皮膚科専門医を受診してください。
・鉛筆の太さより大きい黒~褐色のしみが急にでてきた。
悪性黒色腫では初期にはホクロのように見え、良性のホクロとの見分けが難しいことがあります。また、基底細胞がんは日本人の場合、黒い色を呈することが多く、ホクロと間違えないように注意が必要です。
こんな症状があったら、皮膚科専門医を受診してください。
・長い間治らない、かさかさ、ジクジクした皮膚病がある。
・湿疹といわれて治療したがさっぱり治らない。
・乳頭部、陰部になかなか治らない湿疹のような病変がある。
これらは日光角化症、ボ―エン病、パージェット病と呼ばれる初期の皮膚がんの可能性があります。
・いつまでも治らない傷がある。
・皮膚に明らかな腫瘤ができ急に大きくなってきた。
これらは、有棘細胞がんの可能性があります

多くの皮膚がんが紫外線と関連があることから、紫外線の防御が重要です。外出時の帽子、長袖の衣類の着用、日焼け止めの使用を行ってください。皮膚がんの診断は血液検査ではできません。注意深く皮膚表面の診察を行い、皮膚がんが疑われる皮疹があれば、組織検査を行います。

皮膚がんは早期発見できれば完治できます。早期の皮膚がん(特に表皮内がん)や基底細胞がんは転移の可能性が低く、切除のみで治ります。発見が遅れて浸潤がんとなった場合は、外科的切除だけでなく所属リンパ節廓清、術後の化学療法、放射線療法が必要となりますが、一般に皮膚がんでは有効な化学療法がなく、転移を生じると手の施しようがない状態となってしまいます。しかし、近年悪性黒色腫において免疫チェックポイント阻害薬という免疫を活性化させる新しい薬が使用されるようになり、進行期の悪性黒色腫患者の生存率が上がってきています。

最近導入した新しい治療法について

❶生物学的製剤を用いた乾癬治療

生物学的製剤とは、体の免疫機能にかかわるサイトカインの働きを抑える注射薬です。現在、日本で乾癬に対して使用できる生物学的製剤は11種類あります。従来の治療で十分な効果が得られない場合や、関節症状が強い症例、膿疱性乾癬で難治例にも高い有効性を示します。当科でも2010年より導入後、のべ126人に生物学的製剤を使用し、高い有効性が得られています。しかし、生物学的製剤もすべての患者さんに必ず効果があるわけではありません。また、感染症など重篤な副作用が現れることもあり注意が必要です。当科では日本皮膚科学会で定められた乾癬における生物学的製剤の治療指針に基づいて診療を行い、患者さんの安全性を確保した上で、適切に使用するように努めています。

❷ナローバンドUVB療法

ナローバンドUVBは波長が311~313nm付近に分布する狭い波長幅の紫外線です。当科では全身照射型ナローバンドUVB照射装置(デルマレイ800)を平成21年より導入し、保険適応のある尋常性白斑、尋常性乾癬、掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎、慢性苔癬状粃糠疹(類乾癬)、菌状息肉症の治療に積極的に使用しています。

❸エキシマライト(ターゲット型光線療法)

従来のナローバンドUVB照射装置では広範囲の照射しか出来ず、その為に光の強度が弱く治療効果があらわれるのに長期間を要する、病変以外の正常皮膚にも紫外線があたってしまうなどの欠点がありました。これに対してエキシマライトは308nmの準単色光を高出力で出すターゲット型光線療法装置で、病変部にピンポイントで照射でき、効果が現れるのが早いといった長所があります。当院では平成25年にエキシライトμを導入し、保険適応のある尋常性白斑、尋常性乾癬、掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎、慢性苔癬状粃糠疹(類乾癬)、菌状息肉症の治療に使用しています。

❹ボツリヌストキシンによる腋窩多汗症の治療

多汗症は手掌、足底、腋窩などの発汗が多く、日常生活に様々な支障を来す疾患です。2012年11月から重度の腋窩多汗症に対してボツリヌス毒素製剤(ボトックス®)が保険適応となり、当院でもいち早く導入しています。治療はボトックス®を両腋窩に皮内注射します。薬の効果により、交感神経から汗腺への刺激の伝達をブロックし、発汗が抑えられます。効果は治療後2~3日であらわれ、4~9か月にわたって持続します。効果がなくなれば再度注射を行います。当院ではこれまで25人の患者さんに投与し全例で良好な治療効果が得られています。

入院治療

重症のアトピー性皮膚炎、汎発性湿疹、広範囲熱傷、自己免疫性水疱症(天疱瘡、類天疱瘡)、膠原病(全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎)、血管炎症候群、皮膚のリンパ腫、帯状疱疹、水痘、難治性皮膚潰瘍 、蜂窩織炎などの患者さんが対象となります。その他、円形脱毛症に対するステロイドパルス療法、薬剤アレルギーの原因を検索するための薬剤内服誘発テスト、食物アレルギーの誘発テストなども入院のうえ施行しています。