当院循環器センターの新たな取り組みとして、2019年10月より、重症大動脈弁狭窄症(Aortic Stenosis = AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(Trans-catheter Aortic Valve Implantation = TAVI)の提供を開始しています(図)。
画像提供:エドワーズライフサイエンス(株)
アプローチ部位や選択する人工弁の種類は、患者さんの大動脈弁の性状やカテーテルが通過する動脈の状態等によって変わります。
ASは、心臓の出口にある大動脈弁が、石灰化により硬化・狭小化する病気です。昨今の高齢化社会の進展とともに、ASをはじめとする心臓弁膜症の患者数も増加してきています。ASは、重症化すると、心臓から血液が十分に駆出されず心不全状態となり、突然死をきたすことも多い予後不良な病気です。従来、ASの治療手段としては、開心術による人工弁置換術(Surgical Aortic Valve Replacement = SAVR)が一般的でしたが、SAVRは侵襲度が高く、体力に不安のある患者さんにおいては、手術が躊躇われることも多いのが実情です。
TAVIでは、カテーテルを用いて、狭小化した大動脈弁の内側に、人工弁を留置します。カテーテルは、太腿の付け根の動脈(経鼠径アプローチ)や心臓近くの肋間(経心尖アプローチ)から挿入します。カテーテルの挿入部しか切開しないため、SAVRに比較して、出血量も少なく、手術時間も短くて済みます。低侵襲な治療であるTAVIは、術後回復も早く、合併症の発生リスクも低いため、高齢者や体力の低下したハイリスクな患者さんに適した治療法と考えられます。当院におけるTAVI導入にあたっては、異なる診療科・職種からの意見も重要であると考えられるため、多職種からなる心臓血管病治療チーム(ハートチーム)を立ち上げました。患者さん毎に、最適と考えられる治療法をハートチーム全体で決定しています。ハートチームには、循環器内科に加え、心臓血管外科、麻酔科、血管外科、リハビリテーション科、その他複数部署のスタッフが職種の垣根を超えて加わり、それぞれの立場から治療に貢献しています。