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治療方針

最新の知見に基づいた標準的な治療(科学的根拠に基づく治療:EBM)を基本としていますが、患者さんの年齢や臓器機能に応じた配慮を加えた個別化医療実践を心がけています。単一の施設としてではなく、九州大学第一内科を中心とした福岡骨髄移植(BMT)グループ(FBMTG)の主要施設の一つとして、最先端の臨床研究に参加しています。また、国際共同治験にも参加しているため、通常の保険診療では使用できない一部の新薬を用いた治療も可能です。血液疾患担当医は全員、日本血液学会認定血液専門医です。血液の病気でお困りのことがあれば、遠慮なくご相談下さい。

治療内容

  • 悪性リンパ腫
    当院の血液がん新規診断患者さんの過半数は悪性リンパ腫です。非ホジキンリンパ腫で最も多いびまん性大細胞型リンパ腫(DLBCL)には年齢・心機能に応じR-CHOP療法またはR-TCOP療法を行っています。リンパ腫に対しても分子標的薬をはじめとした新しい薬剤が次々と登場し、治療ガイドラインも毎年のように改定されています。マントル細胞リンパ腫や各種低悪性度リンパ腫については、新規薬剤を積極的に取り入れた治療を行っています。また、再発・難治の場合は、RI標識抗体療法(ゼヴァリン)や大量化学療法併用自家造血幹細胞移植や、必要に応じ同種造血幹細胞移植も行っています。
  • 急性白血病
    当院で診断した急性白血病の多くは、急性骨髄性白血病です。治療は予後予測・年齢などによる層別化を行っています。同種造血幹細胞移植が望ましい方には、HLA半合致移植を含めた最新の移植医療を提供しています。また、ご高齢の方も治療の機会を逃すことがないように、諸臓器の能力に応じた化学療法に心がけています。
  • 多発性骨髄腫
    多発性骨髄腫は発症年齢中央値が65歳前後で高齢者に多い病気です。2006年以降、新しい薬剤が順次使用可能となり、生存期間が延長するとともに生活の質(QOL)も大きく改善しています。当院ではこれら新規薬剤をいち早く導入し、QOLの早期回復を図っています。また、骨髄腫ではアルケラン大量療法併用の自家末梢血幹細胞移植により生存期間が延長しますが、ガイドラインでは65歳が上限とされています。しかし、65歳以上の方でも、お元気な方は移植可能で、FBMTGの臨床研究として治療を行っています。2015年以降、さらに新しい薬剤が次々に保険適応になり、治療選択肢が益々増えています。しかし、同時に治療体系が複雑化し、米国の治療ガイドラインに至っては年に何度も更新されています。当院では、これらの最新情報を随時入手し、ひとりひとりに最適な治療を行うよう心がけています。
  • 慢性骨髄性白血病
    外来治療が主体の疾患ですので、施設間の明確な比較データはありませんが、最新の臨床研究の登録実績からは全国でも有数です。チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)導入以降、本疾患による死亡は激減し、悪性疾患というより慢性疾患に近い経過になりました。しかし、最近、経済的な負担に加え、長期間のTKI服薬による副作用が問題となっています。また、経過良好な方の場合、少なくとも半数はTKIを中止できることが除々に明らかになってきました。そこで、中止条件を満たしている方とは、よく相談の上、ご希望に応じTKIを中止し、慎重に経過観察しています。治療継続が必要な方々も、経済的負担を軽減できるように工夫をしていますので、遠慮なくご相談下さい。
  • その他の造血器悪性疾患(血液がん)
    その他の疾患に関しても、最新の知見、ガイドラインに準拠した治療を行っていますので、お気軽にご相談下さい。

<当院のがん治療 血液腫瘍データ(2020年症例)>

※1 症例区分「80:その他」を除いて集計

登録数の年次推移
■男女の割合
■年齢の割合
■がんの診断、治療のため当院を受診した経路
■当院での「初回診断の有無と初回治療の有無」の組み合わせ
■詳細組織形態別登録数(WHO2017)
WHO2017に基づく分類 2017年 2018年
骨髄系腫瘍 骨髄増殖性疾患、肥満細胞症 12 11
骨髄異形成・骨髄増殖性腫瘍・骨髄異形成症候群 22 29
急性骨髄性白血病及び関連前駆細胞腫瘍 14 19
分化系統不明瞭な急性白血病 (1~3) 0
その他骨髄系腫瘍 0 (1~3)
リンパ系腫瘍 前駆型リンパ球系腫瘍 (4~6) (4~6)
成熟B細胞腫瘍 61 63
形質細胞腫瘍 20 19
成熟T細胞およびNK細胞腫瘍 11 13
ホジキンリンパ腫 (1~3) (1~3)
その他リンパ系腫瘍 (1~3) (1~3)
組織球及び樹状細胞腫瘍 0 0
その他(上記で分類できないもの) 0 0
■UICC TNM治療前ステージ<自施設診断および初回治療実施症例、悪性リンパ腫のみ>

※4

  • *2018年診断症例の集計結果は「がん診療連携拠点病院院内がん登録2018年全国集計」に提出した院内がん登録データを用いています。
  • *2018年診断症例の集計結果は、2019年7月時点での登録されているデータを基にしています。
     資料:「がん登録でみる愛媛県のがん診療2020 施設別集計(院内がん登録2018年診断症例より)」
  • *2018年診断症例の病期分類には、UICC TNM分類 第8版を使用しています。
  • *各集計表において、集計値が9以下の場合、「1~3」「4~6」「7~9」と値を表示しています。
  • *『がん診療連携拠点病院等 院内がん登録 標準登録様式』 2016年版および、2006年度修正版の項目の一部を収集。
     定義については、院内がん登録2016年全国集計の調査方法に準じる。
  • ※1 症例区分「80.その他」を除くについて
    症例区分「80.その他(2016年症例から)」は、セカンドオピニオンなどの診断や治療の区分に含まれない症例の事です。
    この区分を含めて集計を行うと施設間比較の可能性が損なわれるという理由で、基本的な集計対象から除外しています。
  • ※2 「紹介」の扱いについて
    「紹介」は、「他院からの紹介」「がん検診からの紹介」「健康診断からの紹介」「人間ドックからの紹介」の合計です。
    救急車で来院された例は「その他」に含まれます。
  • ※3 症例区分について
    診断のみ 自施設で診断したが、治療の施行は他施設へ紹介・依頼した場合。
    自施設診断・自施設初回治療開始 自施設で診断および初回治療に関する決定をし、腫瘍そのものへの治療を開始した場合。
    自施設診断・自施設初回治療継続 自施設で診断した後、他施設で初回治療が開始され、その後、自施設で初回治療の一部を実施した場合。
    他施設診断・自施設初回治療開始 他施設で診断された後、自施設を受診し、自施設で腫瘍そのものへの治療を開始した場合。
    他施設診断・自施設初回治療継続 他施設で診断した後、他施設で初回治療が開始され、その後、自施設で初回治療の一部を実施した場合。
    初回治療終了後 他施設で初回治療終了後に自施設を受診した場合。自施設受診後の治療の有無は問わない。
  • ※4 UICC TNM分類 第8版
    がんの病期と進展度を記載・分類する最新の国際基準が示されている。
    UICC(国際対がん連合)の監修のもと発刊された正式ガイド。